Q&A

Q   信託財産は誰のものですか?

A   信託の設定によって、委託者が所有していた財産は受託者に移転し、以降、当該財産は、信託財産として、受託者に帰属する財産となります(信託法2条3項)。
このように、信託財産は、形式上「受託者のもの」ですが、受託者は、信託財産を自己の固有財産と分別して管理しなければなりません。また、受託者は、信託財産を好き勝手に管理・処分していいわけではなく、一定の目的にしたがって、管理・処分等すべき義務を負っています。そのほかにも、受託者には、忠実義務、競業避止義務、帳簿作成義務等の義務が課せられています。受託者にこれらの義務が課せられているのは、信託財産が、形式上「受託者のもの」でありながら、受託者の固有財産とは「色分け」された財産であることによります(Q1を参照。)。

それでは、信託財産は「誰のもの」なのでしょうか。結論的には、「誰のものでもない財産」と理解すべきものです。

まず、委託者のものでないことは、信託によって、財産が受託者に移転するため、明らかです。また、受託者のものでないことは、以上で述べたことから分かります。

それでは、受益者のものであるかというと、確かに、税務上、受益者に信託財産が帰属したものとして課税がされますが、税法は、経済的な利益の移転に着目して課税をしているにすぎず、信託財産を「受益者のもの」として扱っているわけではありません。この点、受益者の地位は、株式会社における株主の地位と類似するもので、「会社は株主のもの」といわれることがあることからすれば、「信託財産は受益者のもの」ということができそうです。しかし、株式会社における株主と異なり、受益者には信託財産の管理・処分等について、これを決定する権限が与えられていません。したがって、株式会社における株主の地位との類比により、「信託財産は受益者のもの」と考えることは妥当ではありません。

以上のとおり、信託の設定によって、特定の財産が、委託者のものでも、受託者のものでも、受益者のものでもない財産、すなわち、「誰のものでもない財産」となります。「誰かのもの」であるとすると、その人が好き勝手に財産を処分してしまったりするおそれや、その人の債権者が財産の差押等をして財産が奪われてしまうおそれがあります。特定の財産を「誰のものでもない財産」とすることで、こうしたおそれを回避することができます。そして、そのことによって、円滑な資金調達、事業・財産承継、障害をもった子のための安定した財産給付等を実現することが可能となるのです。

民事信託に関するお問い合わせ

お電話からのお問い合わせ

06-6366-5050

  • 受付:9:00 - 21:00(土日祝休)