Q&A

Q 議決権のみを信託財産とすることはできますか?

A 議決権のみに信託を設定することはできないと理解されます
たとえば、Aが100%の株式を保有しているα会社において、Aに推定相続人BとCがおり、Bは後継者としてα会社の経営に携わっているものの、Cは全く関与していないという場合、Aとしては、Aの生前は自身がα会社の経営に関与し続け、Aの死後は、Bを後継者として、スムーズな事業承継を実現したいというニーズがあります。

この場合、Aは、生前にBに全ての株式を相続させる旨の遺言を作成しておくことが考えられますが、Aの遺産の殆どがα会社の株式である場合、Cから遺留分減殺請求をされるなどして、スムーズな事業承継が果たせないという懸念があります。
また、遺言書は、相続開始時に初めて効力が発生するため、認知症対策や寝たきり対策にはなり得ません。
つまり、将来、もし仮にAが認知症を発症してしまった際には、株主としての議決権の行使ができないため、役員の変更等のα会社の重要事項の決定が行えないという懸念もあります。

この場合において、Aが有するα会社に対する株主権のうち、議決権のみについて信託を設定し、受益者を「A。Aの死後はB」と定めておき、受益権として、「Aが存命中はAが議決権を行使する。Aの死後はBが行使する」、他方、「議決権を除く株主権についてはAの死後、B及びCの双方が相続する」といった信託スキームを組めると便利です。アメリカにおいては、円滑な事業承継のため、このような信託(voting trust)が認められているようです。

しかし、わが国では、一般的に、①議決権を金銭的に評価することはできない、②株主としての地位は議決権と切り離すことはできないといった理由から、議決権のみに信託を設定することはできないと理解されています。

そこで、上記ニーズを満たすため、株式について信託を設定し、上の例ではA、Aの死後は受益者として指定されたBが議決権行使について指図権を有することを内容とする信託を設定することが考えられます。

また、その際、受益権の内容として、たとえば、「α会社から配当を受けた場合に、その配当から給付を受ける権利」を定めておき、このような受益権をB及びCが平等に取得する旨を定めておくことで、Cから遺留分減殺請求を受けるリスクを減殺することが考えられます。

詳しくは、事業承継に関するスキームの項目をご参照下さい。

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