Q&A

Q 債務のみを信託財産とすることはできますか?

A 債務のみを信託財産とすることはできないと理解されます
信託法21条1項本文及び同3号は、次のように定めています。

信託法21条1項本文
次に掲げる権利に係る債務は、信託財産責任負担債務となる。
同3号
信託前に生じた委託者に対する債権であって、当該債権に係る債務を信託財産責任負担債務とする旨の信託行為の定めがあるもの。

この条文によると、委託者が信託設定前に負担していた債務について、その債務を信託財産責任負担債務とする旨を信託行為に定めておくことで、委託者が負担する債務を信託財産とすることができる、と理解されそうです。
このことをもって、「債務を信託財産とすることができるようになった」との評価もあるようです。
しかし、上記条文は、委託者の債権者は、信託行為にその債権(委託者からみれば債務)を信託財産責任負担債務とする旨の定めがある場合には、委託者の固有財産からも、信託財産からも弁済を受けることができる(債権者はどちらの財産に対しても差押えをすることができる)ということを意味するにすぎず、それを超えて、債務を信託財産とすることを認めたと評価することは困難です。
というのも、ある財産が信託財産とされることの効果は、その財産が委託者の固有財産から「色分け」され、委託者の債権者や相続人が、その財産に手をつけられないようにするという点にありますが、債務については、そもそも委託者の債権者や相続人が手をつけようとすることが考えられません。
また、仮に債務について信託を設定することが可能であり、信託の設定によって、委託者の債権者が、信託財産からしか弁済を受けられないという効果が生じるとすれば、借金をした人は債務の信託を設定すればよいこととなってしまいます。

したがって、債務のみを信託財産とすることはできないと理解されます。

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