Q&A

Q 分別管理の方法を教えてください。

信託法34条1項は、次のとおり、受託者の分別管理義務を定めています。

信託法34条1項
受託者は、信託財産に属する財産と固有財産及び他の信託の信託財産に属する財産とを、次の各号に掲げる財産の区分に応じ、当該各号に定める方法により、分別して管理しなければならない。

そして、同条各号の定めは、次のとおりです。
1号 第14条の信託の登記又は登録をすることができる財産(第3号に掲げるものを除く。) 当該信託の登記又は登録
2号 第14条の信託の登記又は登録をすることができない財産(次号に掲げるものを除く。) 次のイ又はロに掲げる財産の区分に応じ、当該イ又はロに定める方法
イ 動産(金銭を除く。) 信託財産に属する財産と固有財産及び他の信託の信託財産に属する財産とを外形上区別することができる状態で保管する方法
ロ 金銭その他のイに掲げる財産以外の財産 その計算を明らかにする方法
3号 法務省令で定める財産 当該財産を適切に分別して管理する方法として法務省令で定めるもの

分かりにくいですが、主な財産ごとに表に表せば、次のとおりです。

財産の種類 分別管理の方法 適用条文
不動産 信託の登記 信託法34Ⅰ①
車両・船舶 信託の登記 信託法34Ⅰ①
動産(金銭を除く)、無記名債権 信託財産に属する財産と固有財産及び他の信託の信託財産に属する財産とを外形上区別することができる状態で保管する方法 信託法34Ⅰ②イ
金銭、債権 その計算を明らかにする方法 (例)帳簿をつける等 信託法34Ⅰ②ロ
有価証券 信託の登記 信託法34Ⅰ③

なお、信託法14条は、次のように定めています。

信託法14条
登記又は登録をしなければ権利の得喪及び変更を第三者に対抗することができない財産については、信託の登記又は登録をしなければ、当該財産が信託財産に属することを第三者に対抗することができない。

信託法14条と信託法34条1項をあわせて読めば、登記又は登録をすることができる財産(信託法34条1項1号及び4号の財産。不動産、船舶、車両、有価証券等)については、分別管理をすることが、信託財産であることを第三者に対抗するため方法と一致することになります。

他方、登記又は登録が第三者対抗要件とされていない動産(信託法34条1項2号イの財産)や、金銭(信託法34条1項2号ロの財産)は、分別管理の方法と、第三者対抗要件の具備とが、厳密には、一致しません。

たとえば、登記又は登録が第三者対抗要件とされていない動産については、ほかの固有財産と保管場所を異にしておくなど、外形上区別できる状態で保管しておかなければ、分別管理義務を履行していることにはなりませんが、信託法14条によれば、格別の対抗要件を具備することが要求されていないことから、何らかの方法によって信託財産であることを証明することができれば、第三者に対抗することができます。

反対に、金銭については、帳簿をつけるなどして、その計算を明らかにできる状態で管理しておくことで、分別管理義務を履行していることにはなりますが、第三者に対抗できるかどうかは別の問題として考える必要があります。

たとえば、受託者が、信託財産である金銭を受託者の固有財産である金銭と一緒に様々な場所(α、β、γ)で保管しており、帳簿の計算上、全体のうち100万円が信託財産であることが計算上明らかであったとします。

問題は、受託者の債権者がαで保管されている金銭100万円を差押えた場合に、受託者又は受益者が、「それは全額信託財産である」という異議を提出できるかということです。

結論として、これはできないと考えられます。

なぜなら、このような異議が認められるとすれば、常に信託財産であることを理由に差押えを排除することができ、債権者を害するからです。

したがって、金銭については、受託者の固有財産と物理的に識別できる形で管理しておかなければ(たとえば、信託契約、信託目録等によって「金銭はαで保管する」と指定しておき、実際にαで金銭を保管する等)、受託者債権者の差押えに対抗できないと解されます。

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