障がいを抱えたお子様のための信託

第1 Aさんの相談事例

事例

Aさん(50歳)は、妻Bさん(53歳)を早くに亡くし、一人娘のCさん(25歳)と2人で暮らしています。Cさんは、生まれながらに重度の知的障がいがあり、施設に通所しながら、Aさんが一人で面倒を見ています。
Aさんは、自宅と1000万円程度の預貯金を有していますが、将来、Cさんがこれを一度に相続しても、Cさんが財産を管理することは困難です。
 

親族関係


 
Aさんには、長女Cさんがいますが、妻Bさんは既に亡くなっています。
Aさんに兄弟はおらず、Bさんには弟Dさんがおり、その妻と長女Eさん(28歳)も含め、Bさんが亡くなった後も良好な親戚関係を続けています。
Cさんは旅行が好きで、年に1回程度、Dさんの妻とEさんが、一緒にCさんを旅行に連れて行ってくれます。

Aさんの希望

Aさんは、Aさんが認知症を発症したり亡くなった後も、Cさんが従来どおり、年1回程度旅行にも行くことができ、不自由なく生活できるようにしたいと考えています。
また、AさんもCさんも亡くなった後は、財産はEさん若しくは社会福祉法人等に寄付したいと考えています。

第2 何も準備していないと

Aさんが認知症を発症した場合

Aさんが、自分の財産を自ら管理できなくなるため、Aさんの代わりにAさんの財産を管理する成年後見人を家庭裁判所に選任してもらう必要があります。
しかし、一般に、成年後見人は、Aさんと面識のない弁護士・司法書士等が選任されることになり、Aさんの希望などを把握しているわけではありません。
また、成年後見人は、Aさんの財産の維持に努めることが基本的な職務のため、Aさんの財産をCさんのために積極的に活用したり、生前贈与等の相続対策をすることは、原則、認められません。

Aさんが亡くなった場合

  1. Cさんに法定後見制度を適用
    Aさんが亡くなれば、Aさんの財産は、相続人のCさんに相続されますが、一度に多額の財産が相続されても、Cさんはこれを管理することが困難です。
    この場合、法定後見制度を利用し、Cさんの成年後見人によって、Cさんの財産を管理してもらうことは可能ですが、何の準備もなく法定後見制度を利用すれば、やはりAさんの希望する内容、すなわち、Cさんが従来どおり、年1回程度旅行にも行ったり、不自由なく生活を送ることは困難になるでしょう。
  2. Cさんも亡くなれば国庫に帰属
    Aさんが亡くなり、その後、Cさんも亡くなれば、相続人が不在となり、財産は国庫に帰属することになります。
  3. Aさんの遺言での対応の限界
    遺言では、Aさんが亡くなった後もCさんに、一定のお小遣いを定期的に交付するというような継続的給付を定めることはできません。
    Aさんは、自分の遺言書の中で、Cさんに財産が相続された後、さらにCさん死亡時の財産承継まで遺言しておくことはできません(これを「後継ぎ遺贈」と言いますが、民法では原則、認められていません)。
    また、Cさん自身は遺言する能力がないと考えられますので、Cさんが、「Eさん若しくは社会福祉法人等に寄付する」といった遺言はできないでしょう。
    これでは、Aさんの希望は、叶えられません。

第3 信託を活用すると

Aさんの希望を実現

民事信託を活用すれば、Aさんが認知症を発症したり亡くなった後も、Cさんが従来どおり、年1回程度旅行に行ったり、不自由なく生活を送ることができるだけでなく、Cさんも亡くなれば、財産をEさん若しくは社会福祉法人等に寄付することが可能となります。

信託スキーム

  1. 信託目的
    Aさんの認知症発症後や死亡後も、Cさんが従来どおりの生活ができるようにし、Cさんの死亡後は、財産はEさん若しくは社会福祉法人等に寄付する。
  2. 登場人物
    ①委託者 A
    ②受託者 C
    ③受益者 第1次受益者 A・C 
         第2次受益者 C ※Aの死亡を契機とする。
    ④帰属権利者 Eもしくは社会福祉法人等
    ⑤信託監督人 弁護士F
  3. 信託財産
    不動産・金銭
  4. 効力発生時期
    Aが、医師の診断書をもって、財産管理能力を失ったとき
  5. 信託期間
    A及びCが死亡するまで

スキーム図

  

信託スキームの説明

Aさんを委託者兼第1次受益者、信託会社を受託者、Cさんを第2次受益者とします。
また、Cさんの財産管理については、成年後見制度も利用し、信託契約で、Cさんも亡くなれば、Eさん若しくは社会福祉法人等に財産を寄付するように設定します。

第4 ワンポイントアドバイス

特定贈与信託

信託の仕組みを利用しつつ、親なき後の子のために、一定の範囲内での非課税制度を組み合わせたものです。特定贈与信託は、委託者から受託者に財産を移転させ、その財産から生じた利益を受益者に帰属させるという点で、信託の仕組みを利用するものです。
また、信託契約の定めによって、受益者が死亡した後、残った財産をボランティア団体等の任意の団体に帰属させることが可能です。
他方、通常の信託と異なる点は
①受託者が信託銀行等の金融機関に限られること
②障害をもつ子が単独で第1次的な受益者にならなければならないという限定があることです。
特定贈与信託の設定により、委託者から受益者に贈与があったものとみなされ、受益者に贈与税が課せられます。
この受益者に課せられる贈与税のうち一定額が、受益者となるお子さんの障害の程度によって、3000万円又は6000万円の限度で非課税となります。

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